−油絵教室−

基礎編〜画用液の種類〜

主な画用液の種類と概要を簡単に説明します。
画用液の効果は、油絵具の表現を幅広くする可能性を秘めています。色彩(絵具)の研究とともに画用液の使い方についても研究と工夫をすることは、オリジナリティーある画面構築に即効的効果があるでしょう。

乾性油

油絵具を練り合わせている油と同じ成分材料です。空気中の酸素を吸って酸化重合し強靭で透明な膜を造ります。油絵具に加えると、絵具の透明性を増し、画面の底からの光沢を付加します。リンシードオイルとポピーオイル、さらにリンシードを加工したスタンドオイルとサンシックンドオイルがあります。膜の強さや乾燥性はリンシードが有用で、通常の画用液のベースにはこれが使われます。光沢を求める場合には加工乾性油、黄変を避ける表現にはポピーオイルがよりよいでしょう。

リンシードオイル

乾性油
亜麻の種子から採った植物性の乾性油です。油絵具の練り合わせ材と同じ成分で、乾燥が早く、固着力、皮膜強度に優れています。ペインティングオイルの中心的成分として画面の構築に関与します。ポピーオイルに比べやや黄変しやすい傾向にあります。

ポピーオイル

乾性油
ケシの種子から採った植物性の乾性油です。油絵具の練り合わせ材と同じ成分で、ペインティングオイルの中心的成分として画面の構築に関与します。リンシードオイルに比べ皮膜強度や乾燥性では劣りますが、油の色の淡さと黄変しにくい性質により、仕上げ段階での使用に効果があります。

スタンドオイル

加工乾性油
リンシードオイルを真空中で加熱重合した重合乾性油で、リンシード同様、画面を構築する役割をもちます。より粘性が強く、乾燥後の皮膜には優れた光沢があります。
ペインティングオイルに加えて使うか、テレピン、ペトロール等で濃度を調節して使用します。

サンシックンドリンシード

加工乾性油
リンシードオイルを伝統的な製法を使い、長期間日光に晒して空気と水の作用をさせた重合油です。蜂蜜状の粘性があり、絵具に混ぜると伸びが良く、筆跡のない画面を作ります。乾燥性や光沢はリンシードよりも優れ、卵黄や膠水などの水性メディウムとも混ざりやすい傾向にあります。
少量の乾燥剤で速乾性の溶き油を作ることが可能です。

樹脂

ベネチアテレピン

樹脂溶液
唐松の樹液を精製した天然バルサムです。屈折率が高く、油絵具に優れた光沢と透明感を与えます。グラッシ技法に使われる画用液の材料として利用されます。
単独で用いると黄変しやすく、乾燥も遅くなります。

ダンマルバニス

樹脂溶液
天然ダンマル樹脂をテレピンに33%で溶かした樹脂溶液です。ペインティングオイルやバニスの素材として、絵具に光沢とのりの良さを与えます。
天然樹脂をそのまま使用しておりますので白濁する場合があります。

マスチックバニス

樹脂溶液
ギリシャ産のマスチック樹脂をテレピンに33%で溶かした樹脂溶液です。絵具に混ぜると、伸びを良くし、細密描写に適します。保護ニスとして使用する場合には、タブローより穏やかで優雅な光沢を画面に与えます。
ニス層は、テレピン等の揮発性油で落とせます。

薄め液

油絵具や画用液の濃度や艶を調整するための薄め液として使われます。植物性のテレピンと石油系のペトロールがありますが、いずれも画面に残ることが無く皮膜をつくりません。特に、描き始めの溶き油として使われますが、多量に油絵具に混ぜて使用すると、絵具の固着力を低下させます。表現上はテレピン、ペトロールの差はほとんどなく、好みで使えます。クサカベの場合、蒸発速度はペトロールがやや速く、天然樹脂などの溶解性はテレピンが優れています。

テレピン

揮発性油
松科植物の樹脂から蒸留・精製した揮発性油です。油絵具や調合溶き油の薄め液として使用します。絵具に流動性を与え、筆さばきをよくします。画面より完全に蒸発しますので、この揮発性油自体には固着力がありません。密栓して保存してください。

ペトロール

揮発性油
石油から蒸留・精製した揮発性油です。油絵具や調合溶き油の薄め液として使用します。絵具に流動性を与え、筆さばきをよくします。画面より完全に蒸発しますので、この揮発性油自体には固着力がありません。粘度が全くない透明の油で、テレピンと比較すると粘りやシミが残ることはないが、固着力は落ちるので使い過ぎると上に塗った絵具が下から剥離することがあり、乾燥後は艶もなく画面はカサカサになります。
密栓して保存してください。

アルファーピネン

揮発性油
テレピンの主成分であるα−ピネンを純粋に分離・精製した揮発性油です。テレピンとほぼ同じ性質をもちますが、蒸発性はさらに高く、樹脂の溶解性に優れます。画面より完全に蒸発します。この揮発性油自体には固着力がありません。密栓して保存してください。

ラベンダーオイル

揮発性油
ラベンダーを蒸留して得る芳香性の強い揮発性油です。
テレピンより樹脂の溶解性にすぐれています。蒸発性はやや緩やかで、微妙なボカシ技法などに使うと効果的です。この揮発性油自体には固着力がありません。
やさしい香気は絵具等の不快臭をやわらげます。

乾燥剤

油絵具の中には、乾燥が遅い色(ブラック類やマダー類、カドミウム系絵具など)があります。制作の乾燥を全体的に調整するため、シッカチーフを直接、乾燥の遅い油絵具に混ぜ合せます。量は、触媒効果が目的ですのでほんの少量で効きます。油絵具の表面からグイグイ乾かすブラウンシッカチーフと、油絵具の内部から乾燥させるホワイトシッカチーフがあります。これらシッカチーフ類の多用は、亀裂や変色の原因になります。

ホワイトシッカチーフ

乾燥促進剤
鉛系・亜鉛系の乾燥促進剤を含み、画面の内部からの乾燥を助けます。無色ですのでホワイト類にも使用できますが、多量に用いると黄変の原因になります。油絵具に15%以下の量で混ぜ合わせて使います。

ブラウンシッカチーフ

乾燥促進剤
コバルト系、鉛系・亜鉛系の乾燥促進剤を含み、画面の表面および内部からの乾燥を助けます。強力な乾燥剤ですので使いすぎると皺よりの可能性があります。液の色は乾燥するに従い薄くなります。
油絵具に10%以下の量で混ぜ合わせて使います。

描画油

乾性油、樹脂、揮発性油、乾燥剤などが使いやすい状態で既に配合された溶き油です。種類によって多少の艶や乾燥性は異なりますが、固着性や亀裂の発生しにくさなど、合理的に設計されています。専門家用というより入門者向けに作られます。低濃度のネオペインテイィングオイルなどは、そのままほとんどの工程で使用できますが、ダンマルペインティングオイル(ダンマル樹脂+スタンドオイル系)やコーパルペインティングオイル(コーパル樹脂+スタンドオイル系)は、高濃度に調整されていますので、使用工程の段階によってテレピンで薄めながら使います。
パンドルは、描画用ニスと呼ばれ、速乾性で光沢があり、スケッチや樹脂の素材などに使われますが、絵具との混ぜ合わせが不十分であると亀裂を生じることがあります。

ネオペインティングオイル

調合溶き油
ポピーオイルをベースにスタンドオイルと天然ダンマル樹脂を配合した速乾性の調合溶き油です。伝統的な配合は、適度な光沢があり油絵具本来の表現を容易にし、黄変、亀裂の心配がありません。テレピン等の溶剤で濃度を調節しながら使用してください。

ペインティングオイルスペシャル

調合溶き油
スタンドオイルと合成石油樹脂を主成分とする速乾性の調合溶き油です。現代的な樹脂による配合は、黄変の心配がなく、光沢のある輝かしい画面を作ります。
高濃度の溶き油ですので、段階に応じテレピン等の溶剤で濃度を調節しながら使用してください。

ペインテイングオイルクイックドライ

調合溶き油
ポピーオイルをベースにスタンドオイルと天然ダンマル樹脂を配合した速乾性の調合溶き油です。伝統的な配合は、適度な光沢があり油絵具本来の表現を容易にし、黄変、亀裂の心配がありません。テレピン等の溶剤で濃度を調節しながら使用してください。

ダンマルペインティングオイル

調合溶き油
スタンドオイルと天然ダンマル樹脂を主成分とする本格的な調合溶き油です。古典的な材料による配合は、油絵具本来の、光沢のある画面を再現し、油絵具の透明性を生かした重層効果に向いています。高濃度の溶き油です。段階に応じ溶剤で濃度調節してください。

コーパルペインティングオイル

調合溶き油
スタンドオイルと天然コーパル樹脂を主成分とする古典的な調合溶き油です。固着力に優れ、光沢のある堅牢な画面をつくります。速乾性です。未乾燥の画面に不用意に使用すると皺よりの恐れがあります。高濃度の製品ですから、段階に応じ溶剤で調節してください。

パンドル

描画用ニス
天然ダンマル樹脂を主成分とする描画用ニスです。乾燥性がきわめて早く、画面に張りのある光沢を与えます。油絵具に良く混ぜず、画面の乾燥バランスを考えずに不用意に使うと亀裂の恐れがあります。速乾性を生かしたスケッチ等のプリマ技法に向いています。 非常に光沢があり固着力も強いので、主に中描きで使用します。油絵具でカドミウム系やホワイトは乾燥が遅いのでパンドルを練り混ぜると多少早くなり、色を薄めて描きたい時やレーキ色のような透明色をより透明にすることが出来ます。

グレージングバニス

描画用ニス
伝統的な配合のグレーズ(透明技法)に向いた描画用バニスです。そのまま油絵具に混ぜるだけで簡単にグレーズ効果を楽しめます。グレーズ層を重ねる場合は下層より上層の乾性油(スタンドオイル等)分を高めてください。下層を溶かさずに描きやすくなります。

加筆用

制作の途中で、画面の一部が艶引きしてしまった時や、画面にはじきが起きた場合に使います。画面を活性化し、絵具の乗りをよくするとともに、画面の艶を均一にしてバルールの見え方を正しくします。

ルツーセ

加筆用ニス
天然ダンマル樹脂を主成分とする加筆用ニスです。乾燥が進み、艶がアンバランスになった画面の光沢を調節し、また、「はじき」を生じるようになった画面を活性化させて絵具どうしの固着を強くします。 これはスプレー式のものが使いやすく、中描きから仕上げにかけて使用します。
使い方は、絵具を塗ったところが乾燥すると部分的に光沢を、失い他の部分と色のバルール(調子)が取れなくなった場合、艶の無くなった所へ吹き付け10分程で描くことが出来ます。

ニス類

油絵具の場合、完成した作品にニス掛けをして保存することが作品の見栄えをよくするとともに、絵具の劣化を防ぎます。また、古来、油絵の特長であった深い光沢は、現在のチューブ絵具ではやや希薄になっています。油絵らしさの主張にも、完成ニスの塗布は効果的です。

タブロー

絵画用ニス
ダンマル樹脂を主成分とする画面保護用ニスです。ガラスのような強い光沢がでます。ニス掛けは、油絵具が充分に乾燥した後、湿度の低い晴れた日に行います。
一般的には、半年以上の乾燥が望まれます。乾燥したニス層は、テレピン等の揮発性油で落とせます。

タブロースペシャル

絵画用ニス
合成樹脂を主成分とする画面光沢用ニスです。画面が指触乾燥すればニス掛けできますが、同じ部分に何度も掛けると絵具が溶け出すことがあります。発表に迫られた急ぎのニス掛けに効果があります。乾燥したニス層は、テレピン等の揮発性油で落とせます。

クリスタルバニス

絵画用ニス
合成樹脂を主成分とする画面保護用ニスです。タブローと効果は同じですがニスに色がありません。ニス掛けは、油絵具が充分に乾燥した後、晴れた日に行います。一般的には、半年以上の乾燥が望まれます。乾燥したニス層は、テレピン等の揮発性油で落とせます。

グロッシーバニス

絵画用ニス
合成樹脂を主成分とする描画用ニスです。パンドルとほぼ同じ性格があり、画面に張りのある光沢を与えますが、パンドルのように亀裂を起こす心配がありません。速乾性を生かしたスケッチ等のプリマ技法に向いています。

その他

フキサチーフ

定着液
木炭・鉛筆・コンテ等の粉末状色材用の定着液です。霧吹きを利用し、画面が均一にしめる程度に軽く吹きつけます。多く掛け過ぎると、液の流れとともに色材も流してしまい、画面を損なうことがあります。噴霧の状態を画面の外で必ず調整してからご使用ください。

ストリッパー

油絵具剥離剤
乾燥固化した油絵具を溶解し除去するための剥離剤です。筆やパレットに付着固化した絵具にこの液を塗り数分から10分程度待ち、絵具が浮き上がってきたところを布やパレットナイフで拭き取ります。作品の画面上で使用する場合は、別所で効果を確認してください。

クリーナー

洗浄液
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